『[電照菊の夜景、幻想の通り路]〜ひかり車中にて想う10〜逢いたいチカラ30』
—前回よりの続きです。
私を乗せた週末の夜の、適度に混雑していた新幹線ひかりは
天竜川を渡り浜名湖を超え
いつの間にか愛知県の中を走っています。
リュウのことを想い
泣き腫らしてしまった目、時折涙ぐんでしまう目を隠すため
サングラスをかけたまま窓の外をずっと眺めていました。
住宅もまばらな夜の風景の中に
いくつもの行灯か提灯のようなもの
ぼんやりとしたオレンジ色の暖かな灯りが集まってそこいら中に点在しています。
それらは列車が進むにつれだんだんと数を増やし
何か賑やかな気分にさせてくれます。
夏祭りかクラシックなクリスマスのイルミネーションを彷佛とさせるような灯りたちです。
でも、
そのどこにも人の姿は見当たりません。
灯りの正体は
“ 電照菊 ”
を育てている照明とガラス製の温室やビニールハウスなのです。
【リンク: 電照菊の夜景.】
愛知県の南方のこの辺り、渥美半島や豊橋は菊の花の出荷量が日本一で
夜間に白熱灯を用いて人工的に日照時間を長くすることで開花の時期を調節しているのです。
暖かみを感じさせてくれるこの灯りたちの中に
誰一人の存在も確かめられない微少な戸惑いに
ここを通り過ぎる度毎に言い知れぬ寂しさと
童話の世界か
エッシャーの不思議な絵の世界に迷い込んでしまった
かのような感覚を覚えてしまうのです。
それは私の心の中では
東京と名古屋の空間的な距離などとは少し異なるひとつの区切り
ともなっています。
その夜景を見送りながら、
リュウの死を間近に迫る事実として覚悟しなければならなかった私は
リュウと過ごせたはずの6年間と引き換えにした
上京してからの経験、試練の数々を
その意味を価値をムリにでも見い出そうとするかのように
次々と思い起こし続けるのです。
—続く。
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